Q1 遺言書はあるのですが、相続人間でその遺言書とは別の内容で、遺産分割の協議をしたいのですが、できますか?
A1 共同相続人・受遺者全員の合意によって、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うことは許されています。ただし、遺言執行者が指定されている場合(民法1006条)又は選任されたとき(民法1010条)は遺産分割協議の有効性が問題となる場合があります(民法1013条)。
Q2 相続の放棄は、被相続人の死亡後3か月以内に、家庭裁判所で手続きをしないと認められないのですか?
A2 相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりません(民法915条1項)。この「自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈にあたって、かつては相続人が相続原因たる事実とそれによって自分が相続人であることが分かった時という考えが通説でしたが、現在では、相続財産が全く存在しないと信じ、かつそのように信ずるにつき相当な理由がある場合には、熟慮期間の起算点について緩和しています。つまり、相続財産についての処分行為をしていない場合、債務の存在を具体的に知った後3か月以内の申立てであれば通常は相続の放棄が受理されているように思います。従って、負債の存在が明らかになった時点において、速やかに手続きをとられることをお勧めします。
Q3 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となっている規定(900条4号但し書)は、未だ使われているのですか?
A3 よく誤解されるのですが、平成25年の最高裁判決で憲法14条1項に反して違憲と判断されたのは、「嫡出子でない子の相続分は、嫡出子である子の相続分の2分の1」とする部分についてです。問いの部分については、現行法上は問題なく適用されています。
Q4 遺産としては、預貯金しかないのですが、遺産分割の調停ができますか?
A4
従前は、預貯金は可分債権と考えられており、相続分に基づいた請求を各相続人が個別の金融機関に対して出来ることから、家庭裁判所の実務では、遺産分割の対象と考えていませんでした。従って、家庭裁判所で受け付ける場合は、「親族間の紛争調整事件」として、一般調停として受け付けていました。この一般調停として受け付けた場合には、調停不成立になった時点で終了していました。
平成28年12月19日に最高裁大法廷で「預貯金も遺産分割の対象に含まれる」として、従来の判例を変更しました。従って、今後は預貯金のみであっても、遺産分割事件として、別表第二事件として受け付けることになります。調停で相続人全員の同意が得られない場合は、特別受益ほかの特別な事情を勘案の上、審判で判断することになるでしょう。
Q5 相続放棄をした者は、被相続人の死亡保険金を受け取ることはできないのですか?
A5 相続放棄をしていても、予め受取人として相続人を指定してあれば、受取人固有の権利として、相続とは関係なく保険金を受け取ることができます。但し、相続税の計算にあたっては、「みなし相続財産」とされて、遺産総額の中に組み込まれます。